今の株式市場で
「本当に、今買っていいのか?」
この違和感がちょっとでも頭をよぎっている人に向けて、今日は書きます。
ここ数年、AI株や半導体株の話題を見ない日はないくらいですよね。
Xを開けばAI、YouTubeを開けばAI、証券会社のレポートもAI祭り。
「とりあえずAI関連持ってないと不安」「半導体に乗り遅れたら終わり」
こんな空気が、じわじわと投資家の心理を支配しているように感じます。
でも、僕はそこに強烈な違和感を持っています。
もちろん、短期的に上がる銘柄はあるし、結果的に勝つ人もいるでしょう。
ただ問題は、そのポジションを自分の言葉で説明できるかどうかです。
20〜30%の暴落は「イレギュラー」ではない
過去のチャートを静かに眺めてみると、
株式市場では20〜30%クラスの下落が、思っている以上に頻繁に起きていることが分かります。
例えば2024~2025年はトランプショックと日銀の0金利脱却
両方とも20~28%ほど下げており、2022年はFRBの金融引き締めで20%超の下落
2021年はコロナショックと、ほぼ毎年のように20%のプチ暴落はきています。
ニュースで「歴史的暴落!」と連呼されているときは、
画面の向こう側の世界が崩壊しているような感覚になりますが、
数年後にそのチャートだけを見返すと、
「ここ、めちゃくちゃいい買い場だったじゃん…」
と、冷静に判断できてしまう。
このギャップが、相場の一番おもしろくて、一番怖いところなんですよね。
暴落の真っ最中にいるとき、人はどうしても
「もっと下がるかもしれない」
「ここで買ったらバカだと思われるかも」
こんな感情に支配されます。
けれど、長期投資家が本来狙うべきタイミングは、
まさにその「みんなが怖がっている瞬間」であって、
今みたいに「AIすごい!」「半導体最強!」と盛り上がっているときではないかもしれないですよね。
日経平均5万円は安いのか、高いのか
例えば、日経平均が5万円になった世界を想像してみてください。
数字だけ見ると「ついにここまで来たか」とテンションが上がりますよね。
でも大事なのは、その数字そのものではなく、そこに織り込まれている期待とリスクです。
ちょっとだけシンプルな計算を使います。
- 仮に日経が5万円から6万2500円まで上がる
- その後20%下落すると、ちょうど5万円に戻ります
同じように、
- 7万1500円まで上がって
- そこから30%落ちても、やっぱり5万円前後に戻ります
ということは、日経平均株価が70,000円を超えるまでに毎年来ている25%ほどの暴落が来るかどうか。もし暴落が来るのであれば、今買うよりも暴落時に買う方が安いという結果になります。
「上がらないと困るポジション」を捨てる
僕が相場を見ていて一番危ないなと思うのは、
- 株価が上がらないと生活が苦しくなる
- 下がった瞬間にメンタルが折れてしまう
こういうポジションを全力で取りにいってしまうパターンです。
マーケットは、僕らの事情なんて一切考えてくれません。
こっちが「そろそろ上がってほしい」と思った瞬間に下げてきたり、
「もう限界!」と思ったタイミングでさらに追い打ちをかけてきたりする。
だからこそ、
- ある程度は株を持って上昇の恩恵を受けながら
- 同時に、20〜30%の下げが来ても冷静に買い増しできる現金を残しておく
このバランスが、長く市場に居続けるための鍵だと感じています。
僕自身、昔は
「フルポジじゃないと機会損失だ」
「キャッシュなんて“サボり”だ」
と本気で思ってました。
その結果、上がっているときは気持ちよくても、
下げ相場が来た瞬間に逃げることしかできず、
振り返ると「一番おいしいところは何もしていなかった」ということが何度もありました。
「なんとなく盛り上がっているから」は一番危険
AI株でも半導体株でも、テーマそのものを否定するつもりは全くありません。
むしろ、長期的には世界を大きく変えていく分野だと思っています。
ただ、ポジションを取る前に立ち止まってほしいのは、
- 自分はそのビジネスモデルを理解しているか
- その企業の本質価値に対して今の株価をどう評価しているのか
- もし明日20〜30%下がったら、「チャンスだ」と思えるのか、それとも震えながら画面を閉じるのか
ここです。
もし今の自分の動機が
「みんな買ってるから」
「Xでバズってたから」
「YouTubeで推されてたから」
このあたりがメインになっているとしたら、
それはもう相場ではなく、“雰囲気”に投資している状態かもしれません。
本当に買っていいと胸を張れるタイミング
僕は、20〜30%クラスの調整や暴落が来たときこそ、
投資家としての力量が問われる瞬間だと思っています。
- そのときに、慌てて投げる側になるのか
- それとも、以前から狙っていた銘柄を淡々と拾いにいける側になるのか
この差は、暴落の当日ではなく、
そのずっと前からの準備で決まっている気がします。
今は、AIや半導体の熱狂もあり、
「乗り遅れたくない」「自分だけ置いていかれたくない」という焦りが生まれやすい時期です。
だからこそ一度立ち止まって、
- 自分のポジションは「上がっても良し、下がっても良し」になっているか
- キャッシュはちゃんと残しているか
- 暴落が来たときに「ようやく来たか」と言える準備ができているか
このあたりを、静かに見直してみてほしいなと思います。
このブログが、
「今、本当にここでポジションを増やすべきなのか?」
そんな自問自答をするきっかけになったら嬉しいです。

